資料番号001

表  題「ニッポン号」世界一周飛行

追加資料
 昭和12年(1937年)4月6日、朝日新聞社は神風号による東京-ロンドン間の連絡飛行を敢行した。この成功に刺激され、毎日新聞社は国産航空機による世界一周親善飛行を企画し、昭和14年(1939年)7月「五大陸、二大洋征覇の世界一周親善飛行」の計画を発表した。使用航空機は海軍より払下げを受けた96式陸上攻撃機で、名称「ニッポン号」は公募により決められた。
 昭和14年8月26日、中尾機長以下6名と大原武夫親善使節(毎日新聞航空部長)が乗り込んだニッポン号は羽田を出発、千歳空港から米国のノームに向い親善飛行を開始した。北太平洋横断しノームに至飛行距離は約4,400kmであるが、ニッポン号はこの距離を16時間弱で飛行した。その後米国の各都市を訪問し、南アメリカ、スぺイン・イタリア・カルカッ夕・バンコク・台北を経由して、10月20日の午後2時近く、羽田に無事帰朝した。飛行時間は約190時間、飛行距離は約53,000kmに及んだが、飛行に関わる大きな問題はなく、我が国の航空技術の確かさが実証されることになった。

補足資料-1
 掲示はニッポン号に搭載された無線電信機の製造元である東京電気無線株式会社が発行した「無線資料・第4巻・第8号」で、「ニッポン号通信士佐藤信貞氏に『無線機』を訊く會」が掲載されている。内容は通信による気象情報の入手や、飛行位置確定に関わる方向探知機の操作、電信機の動作状況等々であるが、親善飛行中の最大通信距離は短波では約5,500km、長波では約800kmで、長波の通達距離には(感嘆の声あり)と記されており、興味深い。



 資料出典:「無線資料・第4巻・第8号」、発行東京電気無線株式会社>

補足資料-2
 写真はニッポン号に搭載された電信機と同型のKRP-292(製造東京電気)で、送信機は水晶発振/自励発振(UZ-502)、電力増幅方式(UY-530 x2並列使用)で送信出力は約60W、受信機はスーパーヘテロダイン方式で高周波増幅1段、中間周波増幅2段、再生検波、低周波増幅2段構成である。
 電信機上段が送信機、中段が短波用受信機、下段が中波用受信機、両受信機の構成は同一と考えられる。



補足資料-3
中波受信機SRP-292J  掲示はKRP-292を構成する中波受信機SRP-292J、製造は東京電気(昭和16年)。本機はスーパーヘテロダイン方式で構成は、高周波増幅UZ-6C6、周波数変換Ut-6A7、中間周波増幅1段UZ-6C6、中間周波増幅二段UZ-6C6、再生検波Ut-6F7(三極部)、低周波増幅1段Ut-6F7(五極部)、低周波増幅二段UY-38である。
 受信機下段左より、同調器、微同調器、音量調整器、再生調整器、受話器端子。受信機上段の横蓋内は真空管収容部で、全構成真空管が横向けに装置されている。



 受信機所蔵: 電気通信大学資料館


資料番号002

表  題陸海軍の雑音対策

追加資料
補足資料-1
 陸軍の雑音対策
 機上雑音については陸海軍共通の問題であったが、日本無線史・第9巻「陸軍無線史」第3章「無線兵器の変遷・航空部隊用」には雑音の具体的原因と対策に関わる記述があり参考になる。

「この当時(昭和13年頃)から問題になっていたのは飛行機の発する電気的雑音を少なくすると云うことであった。むろん発動機の点火系統、発電機及び配線は全部電磁遮断がしてあるが、受話器に入る電気的雑音は相当大きかった。従ってこの時期には改めて電気的雑音の程度並びに各部の電気的抵抗の大きさを測定して資料を集めた。・・・・飛行機の発する電気的雑音に対しては、一応飛行機製作会社に指針を与える必要があったので、仮に受信機固有雑音の五倍以内の電気的雑音ならば許すと云うことにして研究はなお続行していた。・・・又前記飛行機上で通信に障害を及ぼす電気的雑音に関する研究を要約すると次のようである。」

として、別表「通信に障害を及ぼす飛行機発生雑音の研究」では雑音の発生原因を「飛行機自体発生雑音」・「振動による雑音」・「空電による雑音」の三項に分類し、対策と併せ詳細に記述をしている。この内、雑音発生の大部分を占める発動機の点火系については、「雑音最も強大なるもの」、「雑音発生最強」などとして磁石発電機、二次電線、収束電線、点火栓電線、点火栓を上げ、電磁遮断、各接続部締付の重要性を指摘している。
 参考として以下に添付された別表の抜粋を掲示した。





補足資料-2
 海軍資料に見る雑音発生箇所の発見法
 掲示は横須賀航空隊の整備部門が作成した機上雑音の対処法である。内容は上記陸軍資料に重複するが、最終章に「雑音源判定法」として、具体的な雑音発生箇所発見方法の記述があり、また、文中に機上雑音を測定する専用測定器の導入が近いことも記されており、誠に興味深い。このため、参考として本章を以下に掲示した。



資料提供: 日比野正男殿

第三章 雑音源判定法
雑音発生源ヲ感知スルニハ近ク完成スル雑音測定器ニ依ルヲ建前トスルモ現在ニ於イテハ機上整備ノ受信機ニ依ルヲ可トスル
以下其ノ方法ヲ述ブ
機上整備ノ正規受信機ヲ整備シ地上ニ於イテ電池電源ノミニテ駆動シ次ノ順次ニヨリ測定ス
一、音量調整最大トス
二、電信受信トス
三、受信機出力側(受聴器装備側)ニ10000オームノ抵抗ヲ押シ之ニ100V電圧計(デシベルメーター)ヲ結ブ(共ニ通信課ニ有リ)
四、空中線ヲ除外セル時ノ出力(3V以下)ヲ読ミ次ニ空中線ヲ挿入シ受信機ノ目盛リヲ全部回シ電圧ヲ読ミ次表ノ範囲内ノ時ハ良、電圧計ノ指針フラフラスルカ或イハ其ノ値過大ナル時ハ受信用発電機カ受信機ニ不備ノ点アリ
 
 蓄電器目盛  0〜100 
 短   波  2.5〜4V 
 中   波  1.9〜3V 
五、上記ニヨリ受信機側良態ナルヲ確認シタル後受信機ノ出力側ニ受聴器モ準備シ三項ノ電圧計ノ両者ニテ試験ス
六、充電用発電機ハ断ノママトシ発動機ヲ起動、空中線ヲ接続シ受信機出力ヲ検ス、此ノ時雑音電圧増大シ且ツ受聴器ト発動機トニ関係アルパラパラ又ハバラバラト云ウ様ナ断続音アル時ハ磁石発電機ヲ切換ヘテ何シカ此ノ音大ナルカ又ハパラパラ数ノ多少ヲ検ス、次ニ発動機ヲ停止シ前述点火系統ノ整備要領ニ順ジ袋ナットノ締付遮蔽不良部ノ整備等ヲ実施シ再ビ発動機ヲ起動シ前記雑音ノ皆無トナル迄何回モ繰返ス、双発機、四発機ニ於イテハ一ツ宛検ス
七、発動機関係完成セバ充電用発電機制御箱界磁接断器ヲ接トシ雑音ノ有無ヲ検ス、雑音電圧4V以上ナル時ハ各締付金具ヲ良ク締直スト共ニ地絡線ノ良否ヲ確ム、制御箱内蓄電器不良ト認メラルル時ハ交換ヲ要ス
八、以上ハ明確ニ判断シ得ルモノノミヲ述ベタルモ實際ハ電装部品等ノ接地不良締付不良等モ、機体帯電電圧ノ放電等モ同時ニ影響スルヲ以テ調査ニ当リテハ各部ニ注意ヲ払ウ要アリ
九、空電及ビ付近ニアルガレリー式ポンプ自動車等ニ依ル雑音ニ注意スル要アリ
十、本検査ヲ完全ニスル為ニハ雑音ノ区別ニ馴レル事ガ必要ニシテ雑音無キ機体ニテ不良箇所ヲ作リ(袋ナットヲ弛メ、蓄電器ヲ除外スル等)雑音ノ種別ヲ平素研究シテオクコト肝要ナリ


資料番号003

表  題栄21型エンジン

追加資料
 掲示は河口湖飛行館が所蔵する栄21型エンジンである。本機はラバウルで坂井三郎氏が搭乗した零戦21型に搭載されていたエンジンと同型である。本エンジンは空冷式複列14気筒(前部7気筒、後部7気筒)、公称出力940馬力である。

 写真中央が前部シリンダーで、下側のシールドケーブル2本は点火用接線、短い方が前面、長い方が背面のプラグに接続固定される。ただし、現在本エンジンのプラグは取外されており、赤いキャップで蓋がされている。写真右側、灰色の円筒金物は点火接線の分配器、右側の円筒金物は集合排気管である。



写真提供: 杉山弘一殿


資料番号004

表  題機体ボンディング

追加資料
 ボンディングとは、機体の各部を導線で接続し、接合部の不良により発生する機体各部の電位差を解消し、電気的に一つの導体とすることである。ボンディングは機体を構成する各隔壁を中心に行われたと考えられるが、本工事に関わる良い資料を確認したことがない。
 掲示は当館が所蔵する唯一のボンディング資料で、本片は零戦21型を構成していたものである。構造は中央の小隔壁より左右の隔壁にボンディング線が伸びたものであるが、部位は不明である。




資料番号005

表  題坂井三郎著「零戦の運命」

追加資料
 帝国陸海軍の戦闘機用無線電話装置については、海軍のエース坂井三郎氏が著書に記した内容を基に語られることが多い。このため、参考資料として坂井三郎著「零戦の運命」(講談社)より無線装置に関わる記述を以下に抜粋した。



 劣悪な無線電話機(P-423)
 零戦は攻撃一点張りと言われるように攻撃に回ったときは、搭乗員の技倆とあてまって想像以上の力を発揮した戦闘機である。
 その零戦をアメリカ戦闘機と比較して思うことは、零戦は一度離陸発進したら鉄砲玉と同じで、戦闘機間はもちろん基地との無線連絡も不可能だった。理由は、その頃の戦闘機の無線電話の能力が非常に劣悪で、複葉機の90戦時代から零戦時代と飛行機の性能はグングン改良され進歩したにもかかわらず、無線電話機だけは一歩の前進進捗もなかったと言っても言い過ぎではないほどの劣悪な代物であった。
 これは日本海軍の怠慢であった。その頃、日本の航空隊や母艦で、つかいものにならないものを空1号無線電話機のようなやつだと形容したものである。  パイロットたちも活用できれば「こんな便利なものはない!」とわかってはいる。しかし、實際に使ってみると、ガーガーと雑音ばかりで通話にならず、使いものにならないから、使わない。使わないから改良しない、研究しない、ということで、パイロット達は「形ばかりの送受信機など、邪魔物以外の何者でもない」と言って使用しなくなった。
 そんな状態のうちに、太平洋戦争に入ってしまった。
 艦隊では、陸上航空機以上に無線電話の必要を感じて研究、改良が行われたが、それでも満足なものではなかった。機銃の神様田中悦太郎特務大尉のような人物が電信兵の中から現れなかったことは、今考えても、残念至極である。金モール姿で威張っていた通信参謀は、なにをしていたのか! と言いたい。
 開戦を一週間後と感じた台南航空隊の列線では、余暇を見つけては搭乗員も手伝って強敵相手の空戦で、一ノットでもスピードを増すためと、翼、胴体に磨きをかけて空気抵抗少なくする努力をした。これは真剣であった。
 十一月半ば頃、搭乗員?人ひとりに渡されたアメリカをはじめとする連合軍の予想敵機の性能表によると、日華事変(日中戦争)の時の敵機とは比べものにならない強敵と思われたからだ。
 その頃まで、零戦の操縦席には使いものにならない無線電話の送受信機が搭載されていた。備品だから、ただそれだけの理由である。先任搭乗員あった私は、新郷飛行隊長にこう提案した。
「隊長! 一ノットでも早くと祈って機体を磨いているというのに、使いものにもならない無線電話機、邪魔だし不必要な重量物だから取りはずしていいでしょうか」
 隊長の決断は早かった。
「そのとおりだ。みんな取っ払ってしまえ」
 命令一下飛行場の隅のテントのなかに、無線電話機がガラクタとなって積まれた。係りの電信兵はガッカリして、身の置きどころに苦しんでいた。
 続いて私は、整備の先任下士官に問いた。 「無線電話機がガラクタになったんだから、操縦席後方の無線ポールとアンテナも無用になった。取りはずしてもらいたい」
「しかし、これは三菱の工場で取りつけられたもので、簡単にははずれないと思いますよ」
 との返事。
「よし、それなら俺がはずしてやる!」
とポールを左右に揺すってみたら、案外撓むのだ。銀色に塗ってあり、これまで金属とばかり思っていたこの無線ポールは、何と木製であることがわかった。私はきっそく用具係のところへ飛んでいき、鋸を一丁借りてきて、
「このポール一本でも、一ノットや二ノットの空気抵抗になっているかもしれん!」
 そう言いながら、根本からその鋸を使ってひき切った。
 機付きの整備の下士官が薫いて、
「先任! そんなことしていいんですか!」
 ときた。
「使いものにならない無線電話機がガラクタになったんだから、このポールもガラクタにしていいはずだ!」
 搭乗貞の誰かが新郷隊長に御注進におよんだらしく、隊長がやってきて、
「思い切ったことをやったなあ。こりや、零戦格好よくなった。スピードが出そうだ。俺のも切ってくれ」
 これで一件落着。それ以来、台南空戦闘機隊の零戦は無線ポールが取りはずされて格好よくなった。目的の気速がどれほど速くなったかは試してみなかったが、これが四角四面の規則一点張りの平時の海軍だったら、おそらく私、先任搭乗員が懲罰を受けたことは間違いない。


資料番号006

表  題帝国陸海軍航空機用VHF無線電話機

追加資料
補足資料-1
 海軍98式空4号隊内無線電話機
 本機はVHF(30-50MHz)帯を使用した1CHの大型機用編隊内通信用無線電話機である。送信機は水晶発振・逓倍、電力増幅方式で、変調は陽極変調、構成真空管はUY-807三本である。受信機は局部発振が水晶制御のスーパーヘテロダイン方式で、構成は高周波増幅1段、中間周波増幅1段、低周波増幅2段である。水晶発振は送受信機共に原発振周波数を8逓倍して所要の周波数を得る。



海軍98式空4号隊内無線電話機諸元
用途: 大型航空機
通信距離: 対機25km
周波数: 30-50MHz
電波形式: A2(変調電信)、A3(電話)
送信入力: 40w
送信機: 水晶発振・逓倍UY-807、電力増幅UY-807、陽極変調UY-807
受信機: スーパーへテロダイン方式、高周波増幅1段(US-6K7)、周波数混合(US-6A8)、中間周波増幅1段(US-6K7)、検波・低周波増幅1段(US-6B8)、低周波増幅2段(US-6V6)、側音用低周波発振(US-6C5)
電源: 送受信機兼用、直流回転式変圧器(入力12V)br> 空中線: 固定式

補足資料-2
 海軍1式空3号隊内無線電話機改2
 本機はVHF(30-50MHz)帯を使用した1CHの編隊内通信用無線電話機材で中型航空機用に導入された。送信機は水晶発振・逓倍がFZ-064A、電力増幅がFZ-064A、送信出力は7W、変調は受信機の低周波出力段と兼用のハイシング変調方式である。受信機は局部発振が水晶制御のスーパーヘテロダイン方式で、構成は高周波増幅1段、中間周波増幅1段、低周波増幅2段である。水晶発振は送受信機共に原発振周波数を8逓倍して所要の周波数を得る。





 1式空3号隊内無線電話機改2内部。中央シールド板左が送信部、右が受信機部、本機は非常に小型に作られており、回路構成も洗練されている。

海軍1式空3号隊内無線電話機改2諸元
用途: 中型航空機
通信距離: 対機10km
周波数: 30-50MHz
電波形式: A2(変調電信)、A3(電話)
送信入力: 10W
送信機: 入力10W、水晶発振・逓倍FZ-064A、電力増幅FZ-064A 、陽極変調(ハイシング方式)FZ-064A(兼受信回路低周波増幅2段)
受信機: スーパーヘテロダイン方式(局部発振水晶制御)、高周波増幅1段FM2A05A、周波数変換FM2A05A、中間周波増幅1段FM2A05A、検波・低周波増幅1段(兼変調回路音声増幅)FM2A05A、AGC機能付
電源(送受兼用): 直流回転式変圧器(入力12V)
空中線: 固定式

 1式空3号隊内無線電話機改2回路構成図



補足資料-3
陸軍99式飛4号無線機
 本機は編隊内通信用の無線電話機で、運用周波数は43〜50MHzである。送信機は任意の3周波数を実装でき、受信機は6バンドで全帯域を受信する。しかし、実際に運用が可能な周波数は1波で、周波数の変更には送受信機の再調整が必要である。飛4号の特徴は受信機にあり、本機は局部発振水晶制御、中間周波数可変方式(1-2MHz)を採用し、VHF帯機材ながら高安定化を実現している。
 送信機は水晶発振・逓倍、電力増幅方式で送信出力は7W、変調は陽極変調、構成真空管はUY-807A三本である。受信機は局部発振が水晶制御のスーパーヘテロダイン方式で、構成は高周波増幅1段、中間周波増幅1段、低周波増幅2段である。受信機のフロントエンドは局部発振水晶固定、中間周波可変の所謂コリンズタイプである。水晶発振は送受信機共に7?8MHz台の原発振周波数を6逓倍して所要の周波数を得る。



 装置左が送信機、右が受信機、空中線の給電は同軸方式である。

99式飛4号無線機諸元
用途: 編隊内通信用
通信距離: 50km
電波型式: A2(変調電信),A3(電話)
運用周波数: 43〜50MHz(任意の3波)
送信機: 出力7W、水晶発振UY-807A、電力増幅UY-807A 、陽極変調(ハイシング方式)UY-807A
受信機: スーパーヘテロダイン方式(水晶制御方式)、高周波増幅1段、中間周波増幅1段、検波、低周波増幅2段(Ut-6F7 x4)、AGC機能付
電源(送受兼用): 直流回転式変圧器(入力24V)
空中線: 1m(柱高0.8m)、地線: 機体

 99式飛4号回路構成図



回路図作成: 山本健殿


資料番号007

表  題1式空3号無線帰投方位測定機

追加資料
 本機上用方向探知機は戦前米国のFarchild社より購入したクルシー式空3号無線帰投方位測定機を国産化したもので、戦闘機や中型機に搭載された。探知機はスーパーヘテロダイン方式の受信機、方位測定用の枠型空中線、枠型空中線回転器、受信機の遠隔操作を行う管制器、電波の受信方位決定に必要な副空中線(通信用空中線を切替使用)及び、電源装置他により構成される。方位測定(複座機)は目的波を受信し、回転器で枠型空中線を操作し、航路計の「ゼロ」表示又は受聴音最小点により電波の到来角度(真方位)を決定する。しかし、方位測定作業が困難な単座戦闘機の場合は、枠型空中線を機首に対し直角に固定し、航路計の指示針が中央「0」を指すように飛行し、電波の発信元に到達する帰投装置として使用した。

補足資料-1
 1式空3号無線帰投方位測定機構成機材。



 機材左が受信機本体、上に載っているのが電源。右手前左が枠型空中線回転器、中央が方向表示用の航路計、右が空中線切替器で機体空中線を無線機と探知機に切替る。奥が装置構成ケーブル接続箱。背後が枠型空中線。

補足資料-2
 1式空3号無線帰投方位測定機設置用ベンチ



 零戦の場合、帰投装置は操縦席後部右側、第6・第7隔壁に取付られたベンチに装着された。上部にマウントを取付け、装置を固定する。機体は英国のImperial War Museumが所蔵する零戦52型(中島196号)。
 写真提供: 宮崎賢治殿

無線帰投方位測定機の導入
 「航空技術の全貌」(日本出版協同株)第7章「航空通信及び航空電波兵器」(元海軍技術大佐有坂磐雄) には本機材の導入及国産化に係わる経緯について以下のように記されている。

 「従来飛行機が自分の機位を失し、或いは自分の機位を確かめるには、前述の様に自分から中波長波電波を発射し、之を基地又は艦船でその方位を測定して貰う方法が最も簡単であるが、この方法では飛行機がどうしても電波を出さなければならず、この電波は戦時には敵に測定され飛行機の位置を暴露する結果になるので実際には使用できない機会が非常に多いわけである。そこで、飛行機の方に方位測定機をつけて、飛行機の方で基地又は艦船の電波を測定するか、飛行機の方位測定機に連結された航路計指示針に従って目的地に到達する方法がより有利な場合が多いので、昭和11年頃から米国のクルシー、RCA、レーヤー、その他ドイツのテレフンケン等各種の機上方位測定機を参考に研究を開始したが、支那事変が勃発したため急遽整備を必要とするに至り、取敢えず米国のクルシー(Farchild社)、ドイツのテレフンケン製品を相当大量に輸入して急場の用に当てると共に、単座機用、小型機用、大型機用の三種について研究試作に取りかかった。支那事変に参加し、重慶爆撃等に参加した飛行機は、全部これ等の装備を利用して大いに戦果を収めた。昭和14年頃からクルシー式方向探知機は米国が輸出を渋りだし、テレフンケン式もドイツとの交通関係で輸入が困難になったので、単座機用方位測定機の研究を中止し、小型機(単座を含め)はクルシー系に、大型機はテレフンケン系に統一して国産化を急ぎ、小型機用は1式空3号無線帰投方位測定機、大型機用は零式空4号無線帰投方位測定機として大量生産に移った。」

1式空3号無線帰投方位測定機緒元
受信周波数: 170-460KHz、450-1,200KHz
受信機: スーパーへテロダイン方式
構成: 枠型空中線出力増幅6K7、枠型空中線位相切替信号発振6C5、位相切替6J7x2、センス空中線出力増幅6K7、第1検波6K7、第1局部発振6J5、第1中間周波増幅6L7、第2中間周波増幅兼第2局部発振6P7G(3極5極複合管)、第2検波兼低周波増幅1段6Q7(2極3極複合管)、自動音量調整6B8、航路計(表示計)用信号増幅6V6、低周波増幅2段6V6
空中線: 方位測定用回転式枠型(ループ)及び方位決定用センス空中線(通信用空中線兼用)
電源: 回転式直流変圧器


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