資料番号001

表  題米国海軍航空隊用無線装置 RU-16/GF-11及びRU-17/GF-12

追加資料
 RU16/GF11は海軍航空機用の汎用無線装置で、送信機CW-52063A、受信機CW-46051A、電源装置CW-21109A他により構成されている。本装置の原型は1930年代の初頭に導入された。このため、構造は同時期に開発された陸軍のSCR-183と非常に類似している。本装置は海軍航空機用機材であるため送信出力はSCR-183と比べて大きく、また、受信機は航法用に方向探知用枠型空中線の入力端子を備えている。
 なお、RU16/GF11とRU17/GF-12の相違は電源入力電圧で、UR16/GF11が12V、RU17/GF-12が24Vである。

補足資料-1
 主要構成装置



RU16/GF11装置概要
 送信機(CW-52063A)
 本機の構成は自励式の主発振、電力増幅方式である。発振は五極管89の三極管接続によるクラップ回路の変形、電力増幅段は五極管837二本によるプッシュプル(p.p.)構成で陽極同調回路は並列タンク回路方式、出力は電話で約10Wである。空中線同調回路はタンクコイルと兼用の可変式で、同調調整用に空中線電流計を備えている。変調は89による第三格子変調方式で、送話器はカーボン式、変調管はA1・A2運用時に低周波発振器として動作し、低周波発振出力を打電符号確認用として受信機の受話器回路に出力する。電鍵回路は継電器による送信機の高圧制御方式である。
 本機の送信周波数は3,000-4,525KHzで、この周波数帯を差替式コイル4本で運用する。

 受信機(CW-23050)
 本機は高周波増幅3段、検波、低周波増幅1段のストレート方式でAGC、BFO機能を備えている。高周波増幅段は五極管78三本により構成され、BFO回路を含む各段の同調は連動する4連式可変蓄電器により行う。検波は五極管77によるプレート検波方式で、低周波増幅は双三極管38233の三極部を使用した1段増幅である。AGCは77による増幅方式で制御電圧を高周波増幅各管の第一格子に加圧している。
 本受信機は再生・オートダイン検波方式ではない。このため、A1信号復調用に38233の三極部で構成されたBFO回路を備えている。発振はハートレー回路で、出力を検波管のカソード回路に注入している。発振コイルは差替式コイル内に装置されており、発振周波数は受信周波数と同一で、同調操作によりビートを発生させ、A1信号を復調する。
 本無線装置は海軍航空部隊用のため、受信機は方向探知用の枠型空中線接続端子を備えている。このため、一部の受信コイルは長波用と短波用コイルが同一ケース内に収められ、切替により両波を選択使用する構造となっている。また、本式のコイルは遠隔による切替操作が可能である。
 本機の受信周波数は195-13,575KHzで、この周波数帯を差替式コイル9本で運用する。受信機の同調機構は蛇腹ケーブルにより外部の同調操作器に接続され、受信周波数を遠隔で調整することが出来る。

 電源装置(CW-23053)
本機は回転式直流発電機で入力は12V又は24V、送受信機兼用である。

 運用操作
 戦闘機への搭載に際し送受信機の周波数設定は事前に行われる。受信機の同調機構は蛇腹ケーブルにより外部の周波数同調器に接続され、同調補整を行うことが出来る。本装置は電波形式の選択や音量調整等は遠隔操作器により行うが、送受信切替は電信が電鍵操作によるブレークイン方式、電話がプレストーク方式である。

RU16/GF11諸元
用途: 航空機用
通達距離: 電話70Km
送信周波数: 3,000-4,525KHz(コイル4本差替式)
受信周波数: 195-13,575KHz(コイル9本差替式)
電波形式: A1(電信)・A2(変調電信)・A3(電話)
送信出力約10W
送信機: 主発振・電力増幅方式、自励発振89、電力増幅837 x2(p.p.構成)、変調89(第三格子変調)
受信機: ストレート方式(再生機能無)、高周波増幅3段78 x3、AGC増幅77、検波77、ビート発振38233(1/2)、低周波増幅1段38233(1/2)
電源: 直流回転式発電機(送受信機兼用)、入力12V
空中線: ワイヤー固定式

補足資料-2
 主構成装置、左より回転式電源、送信機、受信機



 送信機前面、中央が送信周波数表示用ダイアル板、右下が発振周波数可変用蓄電器、左下が増幅段・空中線回路同調用可変蓄電器、下段のメーターは空中線回路の高周波電流計、右が空中線端子、右端が地線端子。装置上部の蓋は真空管点検・差替用。
 受信機前面、上部が受信空中線(A)、DF用枠型空中線(L・L)入力端子、下部が空中線入力回路補整用可変式蓄電器、下のスイッチが空中線入力切替器、右が地線端子、右上部が受信周波数表示用ダイアル板及び同調操作機構、通常右側に遠隔同調操作器用の蛇腹ケーブルを接続する、下部が電源入力端子。装置上部の蓋は真空管点検・差替用。

補足資料-3
 送信機・受信機内部



 送信機内部、装備真空管手前二本が電力増幅管837、シールド板の陰が発振管89、奥が変調管89。



 可変式蓄電器手前が主発振回路用、奥が増幅段・空中線回路同調用。シャーシ下部の箱は差替式送信コイル。



 受信機内部、右より、高周波増幅1段78、2段78、3段78、AGC増幅77、検波77、BFO・低周波増幅38233。



 受信機上部が高周増幅段、BFO回路を構成する4連式可変蓄電器。横に取付けられた小型の可変蓄電器は高周波増幅2段、3段、BFO回路のトラッキング用。下部が差替式受信コイル。同調機構には調整操作用のノブが取付けられている

補足資料-4
 装置回路構成図



送信機・電源所蔵: 山田忠之殿
回路図出典: PRELIMINARY Instruction Book for Model RU-16/GF-11 and RU-17/GF-12 Western Electric company April, 1941


資料番号002

表  題米国海軍航空隊用無線装置ARC-5

追加資料
 海軍航空隊は1940年に統合的な航空機用無線装置ARA / ATAシステムを導入するが、本装置は190-9,100KHz(送信は2,100-9,100KHz)を各5機の独立した送受信機で運用するものであった。1941年に陸軍は本通信装置を基に殆ど同一構造のSCR-274-Nを開発、導入した。1943年になると海軍は、ARA / ATAに500-2,100KHzを3機でカバーする送信機及び、VHF(100-156MHz)の4チャンネル(CH)電話装置を加えたARC-5を開発、導入した。開発の経緯からARA / ATA、SCR-274-N、ARC-5の構造、回路構成、性能は類似したもので、これらはコマンドセットと総称された。
 ARC-5は海軍航空部隊用無線装置のため、装置には航法支援用として長波帯の送信機が含まれており、同帯域の受信機は方向探知用の枠型空中線接続端子を備えている。
 ARC-5はSCR-274-Nと類似した構造の無線装置ではあるが、各部は必ずしも共通していない。最も大きな違いは変調方式で、SCR-274-Nが第二格子変調であるのに対し、本装置は陽極変調方式を採用している。ARC-5にはVHF帯電話機材が含まれており、このため、変調特性に配慮が払われたものと考えられる。
 なお、ARA / ATA無線装置はSCR-274-Nと構成が相似しているため、装置の概説は割愛した(SCR-274-N参照)。

補足資料-1
 コマンドセット構成装置



 資料出典: Wikipedia AN/ARC-5

補足資料-2
 ARC-5主要構成装置



ARC-5装置概要(長波・短波機材)
 送信機(T-21他)
 本機の回路構造は開発の経緯により、陸軍のSCR-274-Nと相似している。構成は自励式の主発振、電力増幅方式で、発振は三極管1626によるハートレー回路の変形、電力増幅は四極管1625二本の並列使用、陽極同調回路は並列タンク回路方式で、送信出力は電信(A1)が50W、変調電信・電話((A2・A3)が15Wである。空中線同調回路は結合度可変式タンクコイルとインダクタンス可変式延長線輪により構成され、機体空中線に1/4波長で同調させる。本送信機は同調ダイアル目盛りの較正用として、マジックアイ1629による水晶発振回路を備えており、水晶の発振周波数は各送信機のダイアル中央の周波数である。送信機は変調回路を備えておらず、変調・電源の供給は共用の変調機より行う。

 変調機(MD-7)
 本機は変調機及び送信用電源により構成さ、各送信機の共用である。変調回路は低周波発振用三極管12J5-GT、変調管1625二本によるP.P.構成で、変調は陽極変調方式、送話器はカーボン式である。低周波発振回路は1,000Hzを発振し、A2運用時に変調信号として変調管に供給する。また、A1・A2運用時は打電符号確認用として受信機の受話器回路に側音として発振音を出力する。
 電源は直流回転式発電機で入力28V、出力が570Vで変調機、送信機に供給する。
 変調機出力は送信機設置ラックに供給され、各送信機は切替器により選択され、変調機に接続される。

 受信機(R-26他)
ARC-5は海軍用機材のため受信機は航法用(長波帯R-23・R-24)及び通信用(短波帯R-25?R-27)の二種類がある。両受信機の回路構成に大きな違いは無いが、長波用は方向探知用の枠型空中線の入力端子を備えている。
 両受信機の構成は高周波増幅1段、中間周波増幅2段、低周波増幅1段のスーパーヘテロダイン方式で、電源として回転式直流発電機を内蔵している。フロントエンドは高周波増幅が五極管12SK7、周波数変換が五極・三極複合管12K8により構成され、局部発振回路は12K8の三極部によるハートレー方式である。中間周波増幅部は12SK7、五極二極複合管12SF7(五極部)による2段増幅方式であるが、中間周波数は各受信機により異なる。検波は二極・三極複合管12SR7の二極部で行い、低周波増幅は四極管12A6である。BFOは12SR7の三極部によるハートレー発振回路である。
 AGCは長波用受信機が検波部12SR7の二極部によりAVC電圧を発生させ、高周波増幅管及び第一中間周波増幅管の第一格子に加圧している。通信用は第二中間周波増幅管12SF7の二極部によりAVC電圧を発生させ、高周波増幅管・第一中間周波増幅管の第一格子に加圧している。しかし、両機種共にAGC回路には受信モードによる接・断の切替回路は無く、AVC電圧は常時加圧された状態にある。

 ARC-5(長波・短波用)構成各受信機中間周波数
  R-23(190-550KHz)---85KHz
  R-24(520-1,500KHz)---239KHz
  R-25(1,500-3,000KHz)---705KHz
  R-26(3,000-6,000KHz)---1,415KHz
  R-27(6,000-9,100KHz)---2,830KHz

 運用操作
 戦闘機への搭載に際し、送受信機の周波数設定は事前に行われる。受信機の同調機構は蛇腹ケーブルにより外部の周波数同調器に接続され、受信周波数の補整を行うことが出来る。本装置では該当送受信機の選択、電波形式の選定、音量調整等は遠隔操作器により行うが、送受信切替は電信が電鍵操作によるブレークイン方式、電話がプレストーク方式である。

ARC-5(長波・短波用)装置諸元
用途: 航空機用
送信周波数: 500-9,100KHz(選択装備)
受信周波数: 190-9,100KHz(選択装備)
電波形式: A1(電信)、A2(変調電信)、A3(電話)
送信出力: 50W(A1)、15W(A2・A3)
送信機: 主発振・電力増幅方式、自励発振1626、電力増幅1625 x2(並列使用)、周波数較正用水晶発振1629
変調機: 陽極変調1625 x2(P.P.構成)、側音・A2用低周波発振12J5-GT
受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段12SK7、周波数変換12K8、第一中間周波増幅12SK7、第二中間周波増幅12SF7、検波二極・三極複合管12SR7(二極部)、ビート発振12SR7(三極部)、低周波増幅1段12A6
送信機電源: 直流回転式発電機入力28V(変調機装備)
受信機電源: 直流回転式発電機入力28V(各受信機装備)
空中線: ワヤー固定式

補足資料-3
 回路構成図、送信機・変調機/電源・受信機(航法用・通信用)









回路図出典: Handbook BENCH TEST and ALIGNMENT PROCEDURE RADIO EQUIPMENT AN/ARC-5 October 1941


資料番号003

表  題ARC-5 VHF装置

追加資料
 本VHF装置は送信機T-23、受信機R-28により構成され、運用周波数は100-156MHz帯域内の任意に設定された4CHである。送受信機は通常のラックに装備され、変調機(電源)は共用である。

補足資料-1
 ARC-5 VHF装置主要構成機器(左)



ARC-5VHF装置概要
 送信機(T-23)
本機は水晶発振、逓倍、電力増幅方式で、水晶原発振周波数を18逓倍し所要の運用周波数を得る。構成は原発振・第二高調波発生が四極管1625、周波数3逓倍が双ビーム管832AのP.P.構成、電力増幅も同じく832AによるP.P.構成、陽極同調は可変インダクタンス式の並列タンク回路方式で、送信出力は7Wである。空中線同調回路は出力コイルと可変蓄電器により構成され、垂直型空中線に1/4波長で同調させる。なお、給電線は同軸である。
 本送信機は4CH実装式で、各段の同調は周波数毎に機械式周波数登録装置に設定され、管制器のボタン操作により、該当CHが受信機と併せ選択される。

 変調機・電源(MD-7)
 送信機は通常のラックに装置され、変調機・電源は長波・短波機材と兼用である。

 受信機(R-28)
 本機は高周波増幅1段、中間周波増幅2段、低周波増幅2段、局部発振水晶制御のシングルスーパーヘテロダイン方式で、電源として回転式直流発電機を内蔵している。構成は高周波増幅が五極管717A、周波数混合が717A、局部発振が五極管12SH7・717A・717A、中間周波増幅1段・2段が12SH7、検波が双三極管12SL7(1/2)、AVC・スケルチ整流が12SL7(1/2)、低周波増幅1段が双三極管12SL7(1/2)、スケルチが12SL7(1/2)、低周波増幅2段が12A6である。局部発振回路は水晶原発振周波数を24逓倍して所要の周波数を得る。構成は12SH7による水晶発振・第4高調波発生、717Aによる3逓倍、717Aによる2逓倍である。本受信機の第一検波方式は下側ヘテロダイン方式で、中間周波数は6.9MHzである。このため、局発周波数は受信周波数に対し6.9MHz低くなっている。
 本受信機は送信機と同様に4CH実装式で、各段の同調は周波数毎に機械式周波数登録装置に設定され、管制器のボタン操作により、該当CHが送信機と併せ選択される。
 なお、本受信機の装備は長波・短波機材と同一のラックである。

運用操作
 本機VHF装置の運用は専用の管制器により行い、送受信の切替はプレストーク方式である。

ARC-5VHF装置(T-23・R-28)諸元
運用周波数: 100-156MHz(4CH)
電波形式: 電波形式: A2(変調電信)、A3(電話)
送信出力: 7W
送信機: 水晶発振1625、第一周波数逓倍1625、第二周波数逓倍832A、電力増幅832A
変調機: 陽極変調1625 x2(P.P.構成)、側音・A2用低周波発振12J5-GT
受信機: シングルスーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段717A、周波数変換717A、第一中間周波増幅12SH7、第二中間周波増幅12SH7、検波双三極管12SL7-GT(1/2)、AVC・スケルチ整流12SL7-GT(1/2)、スケルチ増幅12SL7-GT(1/2)、低周波増幅1段12SL7-GT(1/2)、低周波増幅2段12A6-GT、局発用水晶発振・逓倍12SH7、第二周波数逓倍717A、第三周波数逓倍717A
中間周波数: 6.9MHz
送信機電源: 直流回転式発電機入力28V(変調機装備)
受信機電源: 直流回転式発電機入力28V(各受信機装備)
空中線: 垂直型

補足資料-2
 送信機T-23(左)、受信機R-28



 機材所蔵: 電気通信大学資料館

補足資料-3
 回路構成図、送信機T-23・受信機R-28





 回路図出典: Handbook of MAINTENANCE INSTRUCTIONS FOR MODEL AN/ARC-5 VHF COMPONENTS 15 April, 1944


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