資料番号001

表  題米国陸軍航空隊用無線装置SCR-183/283

追加資料
 SCR-183は陸軍航空隊が1930年代の初頭に導入した航空機用の汎用無線機材で、装置は送信機BC-AR-230、受信機BC-AR-229、電源装置BD-AR-85他により構成され、運用周波数帯の変更は差替式コイルにより行う。SCR-183の電波形式は送信機がA1(電信)・A2(変調電信)・A3(電話)、受信機はA2・A3で電信復調機能はなく、このため、本装置は無線電話機の性格が強い。
 なお、SCR-183と283の相違は電源入力電圧で、SCR-183が12-14V、283が24-28.5Vである。

補足資料-1
 主要構成装置



SCR-183/283装置概要
 送信機(BC-AR-230)
 本機の構成は自励式の主発振、電力増幅方式である。発振は三極管VT-25Aによるハートレー方式、電力増幅段もVT-25Aで陽極同調回路は並列タンク回路方式、増幅管が三極管であるため中和回路を備え、送信出力は3Wである。空中線同調回路はタンクコイルと兼用の可変式で、同調用に空中線電流計を備えている。
 電鍵回路は送信機の高圧回路を継電器により制御する方式で、変調は三極管VT-52二本(並列使用)による陽極変調方式である。A2運用時、変調管は低周波発振器を兼ね、また、送話器はカーボン式である。
 本機の送信周波数は2,500-7,700KHzで、この周波数帯を差替式コイル5本で運用する。

 受信機(BC-AR-229)
 本機は高周波増幅4段、検波、低周波増幅1段のストレート方式でAGC機能を備えている。高周波増幅段は五極管VT-49四本により構成され、各段の同調回路は連動する4連式可変蓄電器により行う。検波は三極管VT-37の二極管接続で、低周波増幅は五極管VT-38である。本機はA1復調用のビート発生機能を備えておらず、このため、受信電波形式はA2、A3である。AGCは検波出力より制御電圧を発生させ、高周波増幅1段・2段の第一格子に加圧している。また、手動による音量調整は高周波増幅1-3段のカソード電圧を可変して行う。
 本機の受信周波数は201-398KHz、2,500−7,850KHzで、この周波数帯を差替式コイル4本で運用する。受信機の同調機構は蛇腹ケーブルにより外部の同調操作器に接続され、受信周波数を遠隔にて調整することが出来る。

 電源装置(BD-AR-83)
 本機は回転式直流発電機で入力は12V又は24V、送受信機兼用である。

 運用操作
 戦闘機への搭載に際し送受信機の周波数設定は事前に行われる。受信機の同調機構は蛇腹ケーブルにより外部の周波数同調器に接続され、受信周波数の補整を行うことが出来る。本装置は電波形式の選択や音量調整等は遠隔操作器により行うが、送受信切替は電信が電鍵操作によるブレークイン方式、電話がプレストーク方式である。

SCR-183/283諸元
用途: 航空機用
通達距離: 電話50Km 送信周波数: 2,500-7,700KHz(コイル5本差替式)
受信周波数: 201-398KHz、2,500−7,850KHz(コイル4本差替式)
電波形式: 送信機A1(電信)・A2(変調電信)・A3(電話) / 受信機A2・A3
送信出力: 3W
送信機: 主発振・電力増幅方式、自励発振VT-25A、電力増幅VT-25A、陽極変調VT-52 x2(並列使用)兼A2用低周波発振
受信機: ストレート方式(再生機能無)、高周波増幅4段VT-49 x4、検波VT-37(二極管接続)、低周波増幅1段VT-38
電源: 直流回転式発電機(送受信機兼用)、入力12/28V
空中線: ワイヤー固定式

補足資料-2
 SCR-183構成送信機(左)及び受信機



 左が送信機、前面中央上部が送信周波数表示用ダイアル板、右下が発振周波数可変用蓄電器、ダイアル板の左下が増幅段・空中線回路同調用可変蓄電器、下段のメーターは空中線回路の高周波電流計、右隣の端子は空中線用、右端が地線用。装置上部の蓋は真空管点検・差替用。
 右が受信機、前面左上部が受信空中線端子、下部が空中線入力回路補整用可変式蓄電器、右上部が受信周波数表示用ダイアル板及び同調操作機構、通常右側に遠隔同調操作器用の蛇腹ケーブルを接続する、下部が電源入力端子、左が地線端子。装置上部の蓋は真空管点検・差替用。

補足資料-3
 回路構成図



写真・回路図提供: photo courtesy of Mr. Antonio Fucci
http://www.radiomilitari.com/


資料番号002

表  題米国陸軍航空隊用無線装置SCR-274-N(海軍ARA / ATA概説兼用)

追加資料
 本無線装置は1941年に陸軍航空隊が導入した総合的な無線装置であるが、原型は海軍航空隊が1940年に開発したARA / ATA無線装置で、両機の構造は非常に類似している。SCR-274は周波数の異なる4種類の送信機・受信機、変調機により構成され、各機の選択装備により、送信は 3,000-9,100KHz、受信は190-1,500KHz及び3,000-9,100KHzの周波数帯域で運用を行うことが出来る。各送信機、受信機の外部構造同一で、受信機は直流回転式発電機を装備しており、送信機の電源は変調機より供給される。受信機は電源を内蔵しているため各機を同時に動作させる事が出来るが、送信機は変調機・電源が共用のため、運用は各機の切替使用である。
 なお、ARA / ATA無線装置はSCR-274-Nと構成が相似しているため、装置概説は本稿で代用する。

補足資料-1
 主要構成装置



SCR-274- N装置概要
 送信機(BC-694-A他)
 本機は自励式の主発振、電力増幅方式で、発振は三極管VT-137によるハートレー回路の変形、電力増幅は四極管VT-136二本の並列使用、陽極同調回路は並列タンク回路方式で、送信出力は電信(A1)が50W、変調電信・電話((A2・A3)が15Wである。空中線同調回路は結合度可変式タンクコイルとインダクタンス可変式延長線輪により構成され、機体空中線に1/4波長で同調させる。本送信機は同調ダイアル目盛りの較正用として、マジックアイVT138による水晶発振回路を備えており、水晶の発振周波数は各送信機のダイアル中央の周波数である。送信機は変調回路を備えておらず、変調・電源の供給は共用の変調機より行う。

 変調機(DM-33-A)
 本機は変調機及び送信用電源により構成されている。変調回路は低周波発振管VT-135、変調管VT-136により構成され、変調方式は第二格子変調、送話器はカーボン式である。低周波発振回路は1,000Hzを発振し、A2運用時に変調信号として変調管に供給される。また、A1・A2運用時は打電符号確認用として受信機の受話器回路に発振音を出力する。
 電源は直流回転式発電機で入力は28V、出力が570Vで変調機、送信機に供給する。
 変調機出力は送信機設置ラックに供給され、各送信機は切替器により選択され、変調機に接続される。

   受信機(BC-455-B他)
本機は高周波増幅1段、中間周波増幅2段、低周波増幅1段のスーパーヘテロダイン方式で、電源として回転式直流発電機を内蔵している。フロントエンドは高周波増幅が五極管VT-131、周波数変換が五極・三極複合管VT-132により構成され、局部発振回路はVT-132の三極部によるハートレー方式である。中間周波増幅部はVT131による2段増幅方式であるが、中間周波数は各受信機により異なる。検波は二極・三極複合管VT-133の二極部で行い、低周波増幅は四極管VT-134である。BFOはVT-133の三極部によるハートレー発振回路である。
 なお、本受信機はAGC機能を備えていない。

 SCR-274-N構成各受信機中間周波数
  BC-453(190-550KHz)---85KHz
  BC-946(520-1,500KHz)---239KHz
  BC-454(3,000-6,000KHz)---1,415KHz
  BC-455(6,000-9,000KHz)---2,830KHz

 運用操作
 戦闘機への搭載に際し、送受信機の周波数設定は事前に行われる。受信機の同調機構は蛇腹ケーブルにより外部の周波数同調器に接続され、受信周波数の補整を行うことが出来る。本装置では該当送受信機の選択、電波形式の選定、音量調整等は遠隔操作器により行うが、送受信切替は電信が電鍵操作によるブレークイン方式、電話がプレストーク方式である。

SCR-274-N諸元
用途: 航空機用
送信周波数: 3,000-9,100KHz(機材選択装備)
受信周波数: 190-1,500KHz、3,000-9,100KHz(機材選択装備)
電波形式: A1(電信)、A2(変調電信)、A3(電話)
送信出力: 50W(A1)、15W(A2・A3)
送信機: 主発振・電力増幅方式、自励発振VT-137、電力増幅VT-136 x2(並列使用)、周波数較正用水晶発振VT-138
変調機: 変調(第二格子変調)VT-136、側音・A2用低周波発振VT-135
受信機: スーパーヘテロダイン方式、高周波増幅1段VT-131、周波数変換VT-132、第一中間周波増幅VT-131、第二中間周波増幅VT-131、検波VT-33(二極部)、BFO-VT-33(三極部)、低周波増幅1段VT-134
送信機電源: 直流回転式発電機入力28V(変調機装備)
受信機電源: 直流回転式発電機入力28V(各受信機装備)
空中線: ワイヤー固定式

補足資料-2
 当館が所蔵するSCR-274-N



 左が電源・変調機、右が送信機。送信機左がBC-459A(7-9MHz)、右がBC-696A(3-4MHz)。右側送信機後部の開いた蓋には鏡が取付られており、ダイアル較正時にマジックアイの動作を確認する事が出来る。調整時、発振周波数が、較正用水晶周波数に一致するとマジックアイの目が閉じる。



 送信機内部、装置後部左が発振管VT-137、右がマジックアイVT138、両管の間にダイアル較正用水晶片が装置されている、横のアルミケースは発振同調コイル。中央が電力増幅管VT-136、右が同調用タンクコイル、前面パネル裏側に装置されているのがインダクタンス可変式空中線同調用コイル。発振・電力増幅段の同調回路を構成する可変蓄電器はシャーシ内部に配置されている。



 SCR-274-Nに於ける受信機の一般的装備状況。左よりBC-454(3-6MHz)、BC-453(0.19-0.55MHz)、BC-455(6-9.1MHz)、操作箇所は空中線入力調整器のみである。



 受信機内部・フロントエンドの同調・発振回路はアルミケース内に収容されている。全構成真空管は軍用ナンバーのメタル管。背後に電源の回転式直流発電機が装置されている。



 SCR-274-N管制器各種。左が送信機用管制器で電源スイッチ、A1・A2・A3モード切替器、送信機選択スイッチ等により構成されている。中央が受信機用管制器で、本器は受信機3台用、電源スイッチ、A1・A3モード切替器、音量調整器等により構成されている。右が空中線切替器で空中線同調調整用に高周波電流計を備えている。

補足資料-3
 回路構成図、送信機・変調機/電源・受信機




回路図出典: Handbook Maintenance Instructions RADIO SET SCR-274-N February 1943


資料番号003

表  題米国陸軍航空隊用無線装置SCR-522

追加資料
 SCR-522は陸軍航空隊が開発した4CHのVHF無線電話装置であるが、本機は1942年にRAFが導入したTR-1143を再設計したものである。このため、周波数自動選択機構等主要構造はTR-1143を踏襲しているが、構成真空管や周波数逓倍方式は異なり、また、送信機は変調回路を内蔵している。SCR-522の完成度は高く、RAFは後に本機をTR-5043として採用した。

補足資料-1
 SCR-522主要構成装置



SCR-522装置概要
 送信機(BC-625-AM)
本機は水晶発振、逓倍、電力増幅方式で、水晶原発振周波数を18逓倍し所要の運用周波数を得るが、回路構成・逓倍方式はTR-1143とは異なったものである。構成は原発振・第二高調波発生が五極管VT-198-A、各周波数3逓倍が五極管VT-134及び双ビーム管VT-118(832)、電力増幅はVT-118によるP.P.構成、陽極同調は並列タンク回路方式、送信出力は7Wである。空中線同調はタンク回路の結合度を可変して行う。空中線は垂直ブレード型で同調は1/4波長である。
 変調は陽極変調方式で、TR-1143とは異なり、変調回路を内蔵している。音声増幅は五極管VT199、変調がVT-134二本によるP.P.構成である。
 本送信機は4CH実装式で、各段の同調は周波数毎に機械式周波数登録装置に設定され、管制器のボタン操作により、該当CHが受信機と併せ選択される。

 受信機(BC-624-AM)
 本機は高周波増幅1段、中間周波増幅3段、低周波増幅2段、局部発振水晶制御のシングルスーパーヘテロダイン方式である。構成は高周波増幅が五極管VT-203、周波数混合がVT-203、局部発振が双三極管VT-207(1/2)・三極管VT-202・VT-203、中間周波増幅1段・2段・3段がVT-209、検波が双二極・三極複合管VT-169(二極部)、AVC整流がVT-169(二極部)、低周波増幅1段がVT-169(三極部)、低周波増幅2段が三極管VT-135、AVC遅延が双二極管12H6(二極部)、雑音抑制が12H6(二極部)、スケルチがVT-207(1/2)である。局部発振回路は水晶の原発振周波数(8?8.72MHz)より高調波を発生させ、所要の周波数を得る。水晶原発振はVT-207・高調波発生がVT-202、増幅がVT-203である。本受信機の第一検波は下側ヘテロダイン方式で、中間周波数は12MHzである。このため、局発周波数は受信周波数に対し12MHz低くなっている。
 本受信機は送信機と同様に4CH実装式で、各段の同調は周波数毎に機械式周波数登録装置に設定され、管制器のボタン操作により、該当CHが送信機と併せ選択される。

 電源装置(PE-94)
 電源は直流回転式発電機で送受信機共用、入力電圧は12V又は24Vである。

運用操作
 本機の運用はCH切替用ボタンで構成された管制器により行い、送受信の切替はプレストーク方式である。

SCR-522-A諸元
用途: 対空、対地電話通信
通達距離: 高度3,000mで対地約220Km
周波数: 100-124MHz(任意の4周波数)
電波形式: A3(電話)
送信出力: 7W
送信機: 水晶発振6G6G、第一周波数逓倍12A6、第二周波数逓倍832(P.P.構成)、電力増幅832(P.P.構成)、音声増幅6SS7、陽極変調12A6 x2(P.P.構成)
受信機: シングルスーパーヘテロダイン方式、高周波増幅9003、周波数混合9003、局部水晶発振12AH7(三極部)、第一周波数逓倍9002、第二周波数逓倍9003、中間周波増幅一段12SG7、二段12SG7、三段12SG7、検波12C8(二極部)、低周波増幅一段12C8(五極部)、二段12J5-GT、雑音抑制12H6(二極部)、AVC遅延12H6(二極部)、スケルチ12AH7-GT(三極部)
中間周波数: 12MHz
電源: 回転式直流変圧器、入力28V
空中線: 垂直ブレード型

補足資料-2
 当館が所蔵するSCR-522。



 装置上部が受信機、下部が送信機。受信機右側の金属ツマミ2個が4CHのプリセット機構、左が局部発振、右が高周波増幅部設定。送信機中央、4個の金属ツマミが4CHプリセット機構、左より、発振段陽極同調回路、第一逓倍段陽極同調回路、第二逓倍段陽極同調回路、電力増幅段陽極同調回路設定。送信機上部、右側が周波数選択管制器接続端子、中央が電源・音声入出力接続端子、右が空中線接続用の同軸端子。下部左がCH選択サーボ回路駆動用モーター。本装置の機体設置は前面が上部になるようマウントに固定される。



 装置背後、上部受信機はTR-1143とは異なり整然とした造りである。下部送信機、左側が双ビーム管832P.P.構成による第二周波数逓倍段。



 電力増幅段同調回路、双ビーム管832のP.P.構成である。



 4周波数の切替を行う管制器BC-602-A。

補足資料-3
 回路構成図



回路構成図出典: AN 16-40SCR522-2 HANDBOOK OF OPERATING INSTRUCTIONS for RADIO SETS SCR-522-A and SCR-542-A Dec. 1944


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