資料番号001

表  題RAF戦闘機用無線電話機T.R.9D

追加資料
 T.R.9Dは1937年より大戦前期の1942年に掛け、英国戦闘機に装備された短波帯の無線電話機材である。本機を構成する送信機は水晶制御方式で、自励式による主発振・電力増幅方式が一般的であった欧米の航空機用無線装置にあっては特殊である。受信機は再生機能付きのストレート方式で、戦前期の形態を残した構成となっている。T.R.9Dは付加装置によりDF用周波数の自動送信機能を備えているが、大戦中、本機能が利用されたかは不明である。

T.R.9D装置概要
 送信機
 本機は水晶発振・電力増幅方式で、発振は三極管VT-50、電力増幅は五極管VT-51、送信機入力は僅か3Wである。発振はピアス無調整回路の変形で、電力増幅段は並列同調タンク回路方式である。同調コイルは可変インダクタンス方式で、陽極同調と空中線同調を兼ねており、空中線の同調は1/4波長である。本送信機はDF信号発信機能を備えており、このため、陽極・空中線同調回路を継電器で切替え、2周波数をセット出来る構成となっている。必要に応じDF運用を選択すると、通話用送信周波数(N)がDF送信周波数(S)に切替わり、付加装置により1分毎に14秒間無変調波を自動送信する。
 変調は五極管VT-51による陽極変調方式(ハイシングへ変調)であるが、RAFは送話にマグネテック式送話器を使用するため、送話器出力は外部設置の通話装置A-1134により増幅され、変調回路に入力される。
 
 受信機
 本機は高周波増幅2段、格子検波、低周波増幅3段のストレート方式で、構成は高周波増幅1段・2段が四極管VR-18 x2、グリッド検波が三極管VR-27、低周波増幅1段・2段が三極管VR-21 x2、3段が三極管VR-22である。本機は再生機能を備えているが、再生方式は検波回路に於ける帰還方式ではなく、高周波増幅1段部と2段部を可変蓄電器により結合させ再生(発振)状態を誘起させている。高周波部は主同調可変蓄電器及び微調整用可変蓄電器により構成され、微調整用可変蓄電器は操縦席に設置された管制器に蛇腹ケーブルを介し接続される。本受信機の感度調整は高周波増幅管の第二格子電圧を可変して行うが、調整器は管制器に装置されている。
 なお、送受信機を構成する真空管は線条電圧が2Vの直熱管である。

 電源装置
 本機の電源は線條用2V蓄電池及び高圧用120V乾電池により構成され、高圧用乾電池は筐体内送信機下部に収容される。

運用操作
 T.R.9Dは操縦席背後や胴体内に装備される。このため、電源投入、送受信切替、DF動作、受信同調微調整、感度調整等は操縦席横に配置された管制器により行う。また送受話器はA-1134に接続し、本機を介し無線装置に接続される。

補足資料-1
 T.R.9F本体、本機はT.R.9Dの改良型である。無線機本体は装置前面パネル部を上面にした状態で機体に装備される。



 機材左側が送信部、装備のメーター2個は高圧用電流計(左)及び空中線給電確認用の高周波電流計。右が送受信切替器で管制器に蛇腹ケーブルで接続される。メーターの下が送信機終段及び空中線同調器。右のツマミがS周波数用同調コイル可変器及び同調用可変蓄電器。その下、蓋の開いた部分が電力増幅管VT-51及びN・S水晶片収容部、右側の蓋内部は変調管VT-51。
 機材右側が受信部、中央のツマミ2個が受信粗同調及び微同調、微同調機構は蛇腹ケーブルで管制器に連結され、遠隔で同調操作が行える。右の小さなツマミは再生調整器。

T.R.9D諸元
通達距離: 空対空8Km、対地50Km
周波数: 4,300?6,600KHz(通信用に任意の周波数一波、DF信号送信用に一波)
電波形式: A3(電話)
送信入力: 約3W
送信機: 水晶発振VT-50、電力増幅VT-51、陽極(ハイシング)変調VT-51、送話音声増幅用とし外部設置の通話装置A113を使用
受信機: 再生機能付ストレート方式、高周波増幅2段VR-18 x2、検波VR-27、低周波増幅3段VR-21 x2及びVR-22
電源: 低圧2V蓄電池(20AH)、高圧120V乾電池
空中線: ワイヤー固定式
DF送信: 付加装置により地上DF局に対し、毎分14秒間DF用周波数で無変調波を自動送信。

補足資料-2
 送信機内部



 左の真空管は水晶発振用VT-50、リレーはN・S水晶片切替用。中段のベーク板に変調管VT-51、送信電力増幅管VT-51が装置されている。円形構造物はインダクタンス可変式同調器、左のリレーは同調回路N・S切替用。





補足資料-3
 送信機回路構成図



 DF波自動発信回路構成図



補足資料-4
 受信機内部



 構成真空管は左側より高周波増幅一段VR-18、高周波増幅二段VR-18、検波VR-27、低周波増幅一段VR-21、低周波増幅二段VR-21、低周波増幅三段VR-22。中央の箱が同調用可変蓄電器(粗調整・微調整)収容部、上部左が高周波粗同調、右が検波粗同調、微調用可変蓄電器は右端の装置より蛇腹ケーブルで制御盤に接続される。高周波増幅部二段目のツマミ付円筒装置が再生調整用可変蓄電器、再生は高周波増幅部一段、二段の結合度を可変し、発振直前の最高感度点に調整する。



 受信機裏面、各段は厳重にシールドされている。

補足資料-5
 受信機回路構成図



補足資料-6
 機上通話装置A-1134



回路図出典: 英国空軍T.R.9D取扱説明書


資料番号002

表  題RAF戦闘機用無線電話機TR-1143

追加資料
 TR-1143は1942年に導入されたVHF無線電話機材で、予め設定した4周波数を選択使用することが出来る。TR-1143は当時としては画期的な無線装置で、米陸軍は本機を原型として無線装置SCR-522を開発した。本機はT.R.9Dの後継機となるため、容積は当該装置と同一に作られている。

TR-1143装置概要
 送信機
本機は水晶発振、逓倍、電力増幅方式で、水晶原発振周波数を18逓倍し、所要の運用周波数を得る。構成は原発振が五極管VT-R-53、周波数3逓倍が五極管VR-53及びVT-501、2逓倍がVT-501、増幅がVT-501、電力増幅がVT-501二本によるP.P.構成で、送信出力は8W、送信電力確認用に二極管VR-92による検波回路を備えている。
 送信機は4CH実装式で、各段の同調は周波数毎に機械式周波数登録装置に設定され、管制器のボタン操作により該当CHが受信機と併せ選択される。

 変調機・電源
 変調機は外部設置式で、変調回路及び受信機低周波増幅回路、電源により構成されている。変調は陽極変調方式で、音声増幅が五極管VR-56、変調が五極管VT-52二本によるP.P.構成である。変調回路には出力整流、増幅用として二極・三極複合管VR-55を備えているが、資料不足により用途はハッキリしない。受信機音声増幅回路はVR-56、VR-55による二段構成である。

 受信機
 本機は高周波増幅1段、中間周波増幅3段、低周波増幅2段、局部発振水晶制御のシングルスーパーヘテロダイン方式である。構成は高周波増幅がVR-91、周波数混合がVR-91、局部発振がVT-52及びVR-91、中間周波増幅1段・2段がVR-53 、3段がVR-91、検波が双二極 ・三極複合管VR-55(二極部)・AVC整流がVR-55(二極部)・スケルチがVR-55(三極部)で、検波段以下の低周波増幅は変調機に装置されたVR-56、VR-55の2段増幅である。局部発振回路は水晶原発振周波数を18逓倍し、所要の周波数を得る。方式は水晶原発振・第三高調波発生がVT-52、周波数6逓倍がVR-91である。本受信機の第一検波は下側ヘテロダイン方式で、中間周波数は9.72MHzである。このため、局発周波数は受信周波数に対し9.72MHz低くなっている。
 本受信機は送信機と同様に4CH実装式で、各段の同調は周波数毎に機械式周波数登録装置に設定され、管制器のボタン操作により、該当CHが送信機と併せ選択される。

 電源装置
 電源は直流回転式発電機で送受信機共用、入力電圧は12V又は24Vである。

運用操作
 本機の運用はCH切替用ボタンで構成された管制器により行い、送受信の切替はプレストーク方式である。

補足資料-1
 送受信機概要


 写真左が送信機、右が受信機である。送受信機前面の丸型金属ツマミは各段の同調設定機構を構成するプリセット装置である。本機構は米国機材ARC-1やART-13とは異なり各CH毎に装置されたスライドバーによる移動切替方式である。受信機は送信機の上部に設置し筐体に収容するが、機体への装備は切替機構面が上部となる。
 写真提供: photo courtesy of Mr. William L. Howard

TR-1143(TYPE-17・18・19)諸元
用途: 対空、対地電話通信
通達距離: 高度3,000mで対地約220Km
周波数: 100-124MHz(4周波数切替)
電波形式: A3(電話)
送信出力: 8W
送信機(TYPE-17): 水晶発振VR-53、第一周波数逓倍VR-53、第二周波数逓倍VT-501、増幅VT-501、電力増幅VT-501 x2P.P.構成、出力検出VR-92
変調・音声増幅機/電源合体(TYPE-18): 受信低周波増幅1段VR56、増幅2段VR-55、変調音声増幅VR-56、陽極変調VT-52 x2P.P.構成、変調出力整流・増幅VR-55
受信機(TYPE-19): シングルスーパーヘテロダイン方式、高周波増幅VR-91、周波数混合VR-91、局部水晶発振・高調波発生VT-52、周波数逓倍VR-91、中間周波増幅一段VR-53、二段VR-53、三段VR-91、検波VR-55(1/3二極部)、AVC整流VR-55(1/3二極部)、スケルチVR-55(1/3三極部)
中間周波数: 9.72MHz
電源:直流回転式発電機、入力12V又は24V
空中線:垂直ブレード型

補足資料-2
 送信機回路構成図(TYPE-17)



補足資料-3
 変調/音声増幅機回路構成図(TYPE-18)



補足資料-4
 受信機回路構成図(TYPE-19)



回路構成図出典:英国空軍TR-1143取扱説明書(国外語版)



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