資料番号001

表  題「地1号受信機」原型

追加資料
補足資料-1
 掲示は「地1号受信機」の原型である。本機は「地1号無線機・受信機」改良型を基に開発されたと考えられ、相違箇所は以下である。

1. 空中線減衰器が廃止された。
2. 空中線入力減衰回路が切替式に変更された。
3. 中間周波トランス類が刃型接点式より構造が簡単なUZソケットタイプの差込式に変更された。
4. 音量大・小可変機能が廃止された。
5. 電信・切替器がベーク製スイッチに変更された。
6. 交流式電源の交流入力電圧設定回路が簡略化された。

音量可変機能廃止に関わる補足
 「地1号受信機」は「地1号無線機・受信機」とは異なり、低周波段の増幅度を変更し、音量を大・小に切替える機能を具えていない。本機による電話(放送)受信の場合、AGCを適切に動作させるには、手動利得調整器により受信機の動作を最大利得領域に設定する必要がある。しかし、過剰な音響出力を避けるため、結局のところ、最大利得領域に設定することが出来ず、AGC機能を十分に活用することが出来ない。このため、本機は「地1号無線機・受信機」と比べ、電話受聴時に於ける使い勝手は必ずしも良好ではないと考えられる。

「地1号受信機」前面構造
 本受信機の前面構造は殆ど「地1号無線機・受信機」改良型と変わらない。前面右側、地線端子の左側にあった空中線減衰器が廃止され、三段の小型切替器に変更された。前面左側の電話・電信切替器がベーク製スイッチに変更された。



補足資料-2
 「受信機銘板」
 標記が「地1号無線機・受信機」ではなく、「地1号受信機」であることに注意。



補足資料-3
 「受信機内部」
 中間周波トランス類がナイフ接点式よりUZソケットを使用した差込式に変更された。「地1号無線機・受信機」と比べ、構造が簡易化された事が分かる。



補足資料-4
 「受信機裏面」
 内部構造は「地1号無線機・受信機」と大きな違いは無い。フロントエンドに使用されている真空管ソケット及び差替式線輪の受口にはタイト製品を使用している。回路を構成する抵抗や蓄電器類は纏めて配置されており、このため、内部は簡潔であるが、その分配線は長くなっている。



補足資料-5
 「フロントエンド部」
 高周波信号の流れは右から左で、構成は第一高周波増幅(UZ-6D6)、第二高周波増幅(UZ-6D6)、周波数混合(UZ-6C6)、局部発振(UZ-6C6)である。中央のウオームギャはバックラッシュを防止するため二枚重ねである。



補足資料-6
 「中間周波トランス類」
 装置はUZソケット差込式で、トランスに付属の止めネジで基台に固定する。同調はダストコアによる可変式で、調整は側面より行う。写真のIFTは中間周波数が450KHzの2号型で短波帯用、左より第一中間周波増幅段、第二中間周波増幅段、検波段、第二局部発振(BFO)用。長波帯用の1号型も構造は同じである。



補足資料-7

 「水晶式濾波器」
 ケース内部がブリッジ式の水晶濾波器で、左が構成水晶片(450KHz)、右が帯域幅可変用の中和蓄電器。濾波器の右側に装置されている小型可変式蓄電器はBFO回路の発振周波数調整用。



補足資料-8
 「構成受信線輪」一式



補足資料-9
 「短波帯用受信線輪内部」
 コイルが巻かれたボビンはニスで仕上げたタイト製。各同調コイルの内部にはフェライトコアが装置され、インダクタンスを可変する事が出来る。調整は差込式線輪の前面より行うため、再調整時は周波数置換表の収容パネルを取り外す必要がある。



補足資料-10
 「地1号受信機」(原型)回路構成図



 回路図作成: 山本健殿

地1号受信機原型諸元
受信機構成: スーパーヘテロダイン方式(AGC機能付)、高周波増幅2段、中間周波増幅2段、低周波増幅2段
受信周波数: 140-20,000KHz
中間周波数: 65KHz(受信周波数140-1,500KHz)、450KHz(1,500-20,000KHz)
帯域濾波器: 450KHz水晶式濾波器
電源: 蓄電池及び直流変圧器、交流式電源
受信空中線: 逆L型


資料番号002

表  題「地1号受信機(原型)評価試験」   寄稿: 山田忠之殿

追加資料
1. 構成と動作
 旧陸軍航空部隊用地型無線機の最上位機種「地一号無線機」の受信機が地一号受信機である、本受信機は逐次改変された為、外観、回路構成が多少異なるものも有る。
 本評価対象機材は原型式の後期型で昭和19年2月、安立電気株式会社製 第3792号であり、高周波増幅2段(6D6x2)、周変(6C6)、自励第1局発(6C6)、中間周波増幅2段(6D6x2)、検波、第1低周波増幅(6B7)、第2低周波増幅(6C6)、唸周波第2局発(6C6)で構成されたシングル・スーパーヘテロダイン方式の全波汎用受信機で水晶振動子を用いた狭帯域濾波器を備えている。
 受信周波数範囲は140kHz〜20MHzであり、この間を9個の差替線輪でカバーするが140kHz〜1.5MHzの間は中心周波数65kHzの第1号中間周波変成器群を、1.5〜20MHz間は450kHzの第2中間周波変成器群を差し替えて使用する、なお、何れも唸周波(第2局発)発振変成器を備えているので電信波(A1)の受信が可能である、また、450kHz第2号中間周波変成器群を使用の場合は狭帯域水晶濾波器を併用する事が出来る。
 音量調整機能としては、電信受信では手動(MVC)のみが、電話(A3)受信では手動と自動(AVC)の両調整機能が常時同時に作動する方式が採られている。
 受信機本体を駆動する為の電源は 6V AC/DC、略3A,220VDC、略30mAであり、これ等の供給には別体の直流変圧器型電源または交流変圧器型電源の何れかが用いられる。

2. S+N/N (感度) 特性
 
中間周波変成器第1号 中心周波数 65kHz
線輪番号 (帯域 kHz)1 (140〜250)2 (250〜450)3 (450〜820)4 (820〜1500)
周波数 (kHz)14018025025035045045065082082011001500
電話 S/N比 (μV)0.170.230.230.250.170.120.080.070.10.080.110.12
 
中間周波変成器第2号 中心周波数 450kHz
線輪番号 (帯域 kHz)5 (1.5〜2.7)6 (2.7〜4.7)7 (4.7〜8.5)8 (8.5〜13.5)9 (13.5〜20)
周波数 (MHz)1.522.72.73.54.74.768.58.51013.513.51520
電話 S/N比 (μV)0.230.180.150.220.170.160.220.190.170.470.420.40.810.720.55
電信広 S/N比 (μV)0.120.090.090.140.110.090.110.130.120.240.230.250.530.450.3
電話挟 S/N比 (μV)0.050.040.040.050.040.030.040.040.040.080.080.080.140.140.11
 測定法:ノイズ音響出力レベルが1.0Vrmsとなるように音量調整器(受信機利得)を設定した後、信号発生器(HP-8648)のRF出力(50Ω)を空中線端子に入力してノイズ+信号の音響出力レベルが3.3Vrmsを示した時のRF信号レベル値(S+N/N=10db)、 但し、電信でのRF信号はCWで、1kHz唸音が得られるよう音色調整器を設定した、電話に対してのRF信号は1kHz、50%AM変調波。
音響負荷は旧軍4kΩ受話機、音響レベルの測定には目黒電波製MV-17Aを使用。
電源 直流6V 定電圧電源(2.6A)、 直流220V 定電圧電源(30mA)

3. 選択度特性
 
受信周波数 140〜1500kHz (1号 65kHz中間周波変成器)6db=3.5kHz、20db=5kHz、60db=14kHz 写真1参照
受信周波数 1.5〜20MHz (2号 450kHz中間周波変成器)6db=15kHz、20db=20kHz、60db=50kHz 写真2参照
同上 水晶濾波器 入(挟)6db=200Hz,20db=1kHz、60db=20kHz
同上 水晶濾波器 入(広)6db=1.0kHz、20db=3kHz、60db=20kHz
 測定法:第1、第2高周波増幅管、第2局発(唸周波発振)管を抜出し、且つ電信受信として自動音量調整(AVC)機能を停止した上で周変管のコントロールグリッドに0.01μFと60dbのアッテネーター(HP-355D)を介してスペアナ(HP-3585A)のトラッキング信号を入力した、出力は第2検波管2極管部の低インピーダンス側に10MΩ、10pFのプローブを接続して導出し、これをスペアナのハイ・インピーダンス入力端子に入力した。



 写真1受信周波数140〜1500kHz帯の選択度特性
中心周波数の実測値は62.5kHz



 写真2受信周波数1.5〜20MHz帯の選択度特性
内側曲線は水晶濾波器(挟)を作動させた状態

4. その他の機能他
 手動利得調整:音量調整器により可変抵抗器の値を変化して第2高周波増幅器、第1、第2中間周波増幅器のカソード電位を増減することにより総合利得を変化させるもので有効可変範囲は 略110dbで有る。
 自動利得調整:第2中間周波増幅器の出力を2極管検波により整流して出力に応じた負電位を得て、これを第1、第2高周波増幅管、第1、第2中間周波増幅管のコントロールグリッドに帰還して総合利得を調整するもので有る、有効範囲は略120db。
 唸音発生:音色調整器による唸音の可変範囲は第1、第2中間周波共に中心周波数に対して略±4kHzで有る。
 音響特性:頂点 800Hz、-6db減衰点 500Hz,1.6kHzとする山形である、有効出力は30Vrms(4kΩ負荷)

5. 所 見
 全周波数域に亘って感度、S/N比は共に昨今の通信用高級受信機に比べて勝とも劣らない高性能を有しており、A1,A3,AM放送波を対象とする限りに於いては狭帯域濾波器を含めた諸選択度特性、短中期周波数安定度、ダイナミックレンジ等の電気的諸特性も極めて優秀、安定で、今日、短波帯での主たる電話通信方式であるSSB受信も混信障害を無視すれば実用に耐えうる総じて電気的性能については60数年を経た今日に有っても優れた全波受信機と言える。
 但し、現今とみに重要視されている周波数の設定、読取等の周波数管理機能は自励発振を基にした100度目盛表示値からの表換算方式であり、如何にも貧弱、大雑把で方式から推して確度、精度、再現性、長期安定度の諸点からして到底、昨今の要求を充たし得ない、加えて、線輪差替による周波数帯域拡張方式も煩雑で利便性に欠ける。
 音量、選択度、音調、高周波補正等の操作機能は簡便、合理的で使い易い。 同調機構はウオームギヤーとダブルギヤーを用いたバックラッシュ・レス減速方式でありスムースな同調操作が行えるが高周波域に於いては減速比20:1では些か減速比不足で狭帯域での同調操作は容易ではない。
 欠点とした諸項目は通信の高度化、輻輳の現状に於いて顕在化したもので当時は問題視される事は無く、従って地一号受信機は最上位汎用全波受信機として諸場面に於いて遺憾なく高機能、高性能を発揮し目的を十二分に果たしたと考えられる。


資料番号003

表  題「地1号受信機」電源装置

追加資料
「地1号受信機」の電源装置は「地1号無線機・受信機」と同様に、交流式、直流式の2種が整備されている。交流入力電圧は100V、200Vの選択式で、周波数は50〜80Hzである。整流はKX-80による両波整流で、出力は200V、線條電圧は交流6Vである。
 直流式電源は回転変圧器方式で、直流入力6Vで発電機を駆動し出力200Vを得る。線條用電源は入力6Vをそのまま供給する。

補足資料-1
 「地1号受信機」電源
 本電源は普及型で、以降導入される地1号受信機2型、ム65受信機も同一構造の電源を装備している。対応電圧は100V・200Vで電圧の切替えは内部に装置されたスライド式切替器により行う。選択電圧は前面パネル左上の角窓に表示される。前面パネル右上は電圧計。下段左が電圧微細設定用切替器で、設定される100V又は200Vを±10V間隔で20Vまで可変する事が出来、可変は電圧計の指示が100Vとなるように設定する。右は電源開閉器である。





補足資料-2
 「地1号受信機直流式電源」
 本機は回転式の直流変圧器で、「地1号無線機・受信機」用電源も同一構造と考えられる。入力は直流6Vで高圧出力は200V、線條電圧用として直流入力6Vをそのまま出力している。なお、「地1号無線機・受信機」の場合、回路図によると線條用の入出力電圧は直流6.3Vである。





機材所蔵・写真提供: 山田忠之殿


資料番号004

表  題「地1号受信機2型」

追加資料
補足資料-1
 掲示は「地1号受信機」の改良型、「地1号受信機2型」である。回路構成は「地1号受信機」と同一であるが、本型では受信周波数が原型の140-20,000KHzより常用の2,500-13,350KHzに変更され、構成線輪が9本より3本となった。当然の事として、受信周波数の変更により、中間周波トランスは2号型(450KHz)のみとなり、1号型(65KHz)は廃止された。
 本型では構造の簡易化が進み、また、時局を反映し部品の簡素化や材質の低下が明らかである。前面構造は、ツマミ類の殆どが製造の容易な小型の物に変更され、示名条片は角型のアルミ板となり、これに可変値が印刷されている。前面の取手もアルミ棒よりアングルに変更された。





補足資料-2
 「地1号受信機2型回路構成図」


回路図作成: 山本健殿

地1号受信機2型諸元
受信機: スーパーヘテロダイン方式(AGC機能付)、高周波増幅2段、中間周波増幅2段、低周波増幅2段
受信周波数: 2,500-13,350KHz
中間周波数: 450KHz
帯域濾波器: 450KHz水晶式濾波器
電源: 蓄電池及び直流変圧器、交流式電源
受信空中線: 逆L型


資料番号005

表  題「ム65二型改受信機」

追加資料
補足資料-1
 掲示は「地1号受信機2型」の改良型(簡易型)である「ム65二型改受信機」である。戦争末期に行われた機材標記方法の変更により、従来であれは「地1号受信機3型」、又は、「地1号受信機2型改」となるものが、「ム65二型改受信機」と標記された。本受信機は戦争末期型であるため「地1号受信機2型」とくらべ更に簡易化が進み、水晶式濾波器が廃止され、代わりにLC構成のバンドパス式濾波器が低周波増幅二段部の入力側に装置された。本濾波器は電信の選択度向上用と考えられ、同調周波数は0.8〜1KHz程度と推測される。また、併せAGC機能が廃止され、本機は電信専用機の性格が強い受信機となった。
 構造の更なる簡略化も進み、フロントエンド部の構成真空管を含む遮蔽隔壁が廃止され、水晶式濾波器の廃止により、検波段入力側IFTの構造が変更され、配置が若干変わった。また、IFTを装置するソケット部がシャーシの直付けとなった。

改修に関わる若干の補足
 「ム65二型改受信機」の受信周波数は2,500-13,350KHzで、IFTは450KHzの一種類である。このため、もはやIFTは差替構造である必要は無いが、本受信機ではこの方式が引続き採用された。また、AGC機能が廃止されたが、本回路を構成するリモートカットオフ管UZ-6D6は引き続き使用され、構成真空管に変更はなかった。
 これらは何れも、戦争末期の混乱により、製造済み製品の流用を含め、従来の構造が踏襲されたものと考えられるが、受信機の設計としては不徹底である。このため、「ム65二型改受信機」の更なる改修型として、IFTは通常構造のシャーシ直付で、構成真空管がUZ-6C6及びUt-6B7の二管種により構成された機材が計画された可能性も有る。

写真補足
 掲示受信機の銘板は「地1号受信機」となっているが、これは本機の御所蔵者が暫定措置として取りつけたものである。





機材所蔵・写真提供: 鈴木霧殿

補足資料-2
「ム65二型改受信機」回路構成図



回路図作成: 山本健殿

ム65型二型改受信機諸元
受信機: スーパーヘテロダイン方式(AGC機能無し)、高周波増幅2段、中間周波増幅2段、低周波増幅2段
受信周波数: 2,500-13,350KHz
中間周波数: 450KHz
電源: 蓄電池及び直流変圧器、交流式電源
空中線: 逆L式


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